水道管が老朽化していたり、漏水が起きたりした場合に水道業者に修理を依頼する事があるかと思います。
その際、業者さんから「引き直し工事」を勧められる場合があります。 それはどういう工事なのか?何故必要なのか?などの疑問にお答えしたいと思います。
そもそも水道管の寿命は?
水道管の素材の種類にもよりますが、一般的に30~40年程度と言われています。 ただし、素材や土壌の状況、施工方法などによりもっと短くなる可能性はあります。
東京都水道局のホームページには、特に耐用年数を定めていないものの15年と書いてあります。
(参考:東京都水道局ホームページ/よくある質問)
今回は、一般住宅における「水道管」について水道管の種類や漏水時の対処方法などを書いてみたいと思います。 なお、分かりやすさを重視で書いていますので、 厳密には言えば違う 正式名称ではない 地域によって呼び方が[…]
寿命が過ぎるとどうなる?
水道管が老朽化すると素材にもよりますが、色々な弊害が起きてきます。
- 蛇口から錆が出てくる
- ピンホールと呼ばれる小さい穴が空く
- 少しの衝撃で漏水が起きる
- 腐食がひどいと、その部分からの修理が出来ない
蛇口から錆が出てくる
主に「鉄」の管を使っていると起きる現象です。
錆が水道管の内部に入り込み、蛇口をひねると錆の混じった水(赤水)が出ます。 赤水のまま料理等には使えないので、赤水が出なくなるまでしばらく出しっぱなしにしなくてはなりません。
また、赤水がシンクの内部などに付着したまま放置すると、錆が移り簡単に洗ったぐらいでは落ちなくなります。
ピンホールと呼ばれる小さい穴が空く
主に「銅」の管で発生します。
銅なので鉄などのように錆びる訳ではないのですが、銅管が老朽化すると特に衝撃を加えた訳でもなく、凍結した訳でもなく、自然に針で刺したような穴が空きます。
熱に強く、加工しやすいので、かつては一戸建てのお宅ではお湯の管の主流として使われていたのですが、最近の新築ではあまり使われなくなっています。その理由の一つが老朽化した時にピンホールが発生するからです。
少しの衝撃で漏水が起きる
錆びた鉄をイメージして頂きたいのですが、錆びていない時に比べ、ボロボロになりますよね?
鉄の水道管でも同じ事が起きます。元々は鉄なので当然硬いので、少しくらいの衝撃では何ともありません。 しかし、ボロボロに錆びるとひどい場合には手を触れただけで漏水が起きます。
塩ビ管の場合にも老朽化すると乾燥し、粘りがなくなるので少しの衝撃でパリっと割れる事があります。
厳密には素材が違いますが、古くなったプラスチックをイメージしてみて下さい。
新品のプラスチックでは折り曲げてもなかなか割れないですが、古い乾燥したプラスチックはすぐに割れます。
腐食がひどいとその部分からの修理が出来ない
こちらの画像をご覧下さい。 この錆びた水道管は使われていない管ではなく、使用中の水道管です。
おそらく少し触っただけで、折れて噴水が起きるかと思います。
仮にこの部分で漏水が起きて修理で直そうとしても、これだけ管が錆びていると、これに繋ぎこむ事が出来ません。
何故かと言うと、繋ぎこむ為には多少なりとも力をかけなくてはいけませんが、この管に力を加えるとその部分が間違いなく折れます。
また、仮に繋ぎこむ事が出来たとしても、繋ぎこんだその部分から絶対に漏水が起きます。 ですので、修理で直すにしてもある程度状態の良い部分でないと修理不可になります。
では、こういう場合はどのように修理するかというと、水道管の上流側・下流側まで遡って状態の良い部分を探す事になります。 状態さえ良ければ50㎝くらいの修理範囲で済むのに、場合によっては数m~数十mの修理範囲に広がってしまう場合もあります。
寿命が過ぎるといつ、どこで漏水が起きてもおかしくない
水道管の寿命が過ぎると先ほど紹介したような弊害が起きます。 まとめると、
水道管の引き直し工事とは具体的にどういう事?
上記で紹介したように、水道管には寿命があります。 寿命を迎えた水道管を新たに引き直す工事が「水道管の引き直し工事」です。 それでは具体的に説明していきます。
元々の水道管のルートは?
まずは、新築時に元々配管したルートを考えてみます。
下のイラストは宅地内の水道管を簡易表示したものです。
水道メーターから始まり、駐車場の下、土の下、床の下、壁の中を通り、各箇所に繋がっています。
同じルートで水道管を交換するのは大掛かりな工事
この既存の水道管のルートと同じルートで新しい水道管と交換しようとすると、
- 床を何か所か切る必要がある
- 切った床のフローリングもしくはCFの張替作業が必要になる
- 壁を何か所か切る必要がある
- 切った壁のベニヤ、もしくは石膏ボードの張替、壁紙の張替が必要になる
このような作業が必要になり、場合によっては配管する工事よりも大工工事・内装工事の方が高額になってしまいます。
引き直し工事は元々のルートを無視
そこで通常、「引き直し工事」を行う場合には、元々のルートを無視して新しいルートで文字通り「引き直します」 このように、新しい水道管はなるべく大工工事・内装工事が必要のないようなルートにします。
また、元々の既存管も特に必要のない限り撤去せずにそのままにします。 キレイに撤去しようとすると、結局大工工事や内装工事が必要になってしまうからです。
水道管の「交換」ではなく「引き直し」
上記で説明したように、古い水道管はそのままに、新しいルートで配管し直します。 ですので、「水道管の交換」とは言わずに「水道管の引き直し」と言います。
水道管の引き直し工事は必要なのか?
ここまでの説明で、「水道管の寿命について」「引き直し工事の方法」を説明致しました。 次にこの工事が必要なのかどうかについて考えてみたいと思います。
引き直し工事は一般的に行われている工事なのか?
今このページをご覧の方は、おそらく水道業者さんや工務店さんなどにこの工事を勧められているのではないでしょうか?
そして、馴染みのない工事だったので調べてみようと思ってこのサイトに辿り着いたのではないでしょうか?
あまりこの名称の工事には一般の方は馴染みが無いと思います。 何故ならこの工事を行うのは水道管が30年前後経っている場合が多いので、普通の木造住宅の寿命を考えると一生に一度やるかやらないかの工事なのです。
(実際の寿命ではないですが、参考までに税務上の木造住宅の法定耐用年数は22年)
ですが、漏水が起きている状況によっては修理で直すよりも、引き直して工事をした方が良い場合があります。
では、どういう状況で引き直し工事を行われるのかを次で説明したいと思います。
どういう状況で引き直し工事を勧める?
漏水のご依頼を受けた時に、基本的に弊社では当然修理を前提に考えます。
実際漏水依頼の95%くらいは修理で終わっています。
ですが、稀に修理ではなく引き直し工事を勧める場合があります。 それはどういう場合かと言うと、
- ここ数年で何回も漏水が起きている
- 既存の水道管を50年以上使用している
- 漏水調査の結果、漏水箇所が不明
- 漏水箇所が修理困難
- 家の構造的に引き直したとしても莫大な工事費用にならない
ここ数年で何回も漏水が起きている
同じ年数使っている水道管であれば、素材や土壌などの条件の違いはありますが、一度漏水が起きるとその部分を直したとしてもまた違う場所で漏水が起きる可能性が高いです。
それが数年以内に何度も漏水が起きているのであれば、その都度修理費を払うよりもどこかのタイミングで引き直し工事をしてしまった方が、将来的に長い目で見れば安く済む可能性があります。
既存の水道管を50年以上使用している
50年以上使用しているとなると、水道管の寿命を大きく超えています。 漏水箇所の水道管の状態によっては、修理不可になる可能性もありますし、また別の場所で漏水が起きる可能性も高いです。
漏水調査の結果、漏水箇所が不明
地中深くで微量の漏れだと漏水調査を行っても、漏水箇所が特定出来ない場合があります。
引き続き、後日違う方法で漏水調査を行う事も出来ますが、漏水調査の費用が高額になりそうであれば、漏水調査をせずに引き直し工事を勧める場合があります。
漏水箇所が修理困難
漏水箇所が特定出来ても、修理が困難な場合があります。 例えば、
- 鉄管の錆がひどすぎて、繋ぎこむ事が出来ない
- 分厚いコンクリートの下や、配管まで数m下の埋設部
- 家の基礎の中
これらの箇所での漏水は修理が困難か、修理する為には大がかりな別の工事が必要になってしまう可能性があります。
家の構造的に引き直したとしても莫大な工事費用にならない
当然ながら家の構造や施工条件は一件一件違います。
同じ配管距離が50mの家でも工事費が20万円程度で済む家もあれば、100万円以上かかる家もあります。
それらは現場の状況次第なので現場を拝見させて頂かない事にはお見積りは出せませんが、
漏水調査費+修理費と引き直した場合の費用を比べて、
同じくらいの費用、もしくはそこまで大きく費用が変わらないのであれば、引き直し工事の方を勧める場合があります。
引き直し工事のメリット・デメリットは?
メリット
- 漏水箇所を特定する必要が無いので、漏水調査費がかからない。
- 基本的に全ての水道管が新しくなるので、老朽化による漏水の心配が無くなる
- 使いにくかった蛇口の位置の変更や、新たに蛇口の新設などが一緒に出来る
デメリット
- 修理で終わった場合に比べると費用がかかる
- 壁の中に配管しないので、外壁に配管する事になり見栄えがあまり良くない
漏水を修理で直した場合のメリット・デメリットは?
メリット
- 引き直し工事に比べれば費用は安い
- 修理箇所以外は工事が必要ない
- 引き直し工事が数日かかるのに比べ、短い工期なのでストレスも少ない
デメリット
- 漏水箇所を特定するのに時間がかかり、漏水調査が修理費より高くなる場合がある
- 漏水調査をした結果、場所の特定が出来ない、もしくは特定出来ても修理不可の場合がある
- 修理した部分以外は古いままなので、また違う場所で漏水が起きる可能性がある